認知症の親が抱えていた借金、息子の私に支払い義務がある?

認知症の親が抱えていた借金、息子の私に支払い義務がある?

Aさんは実家の近くに住む親戚から父親の様子がおかしいと連絡を受けました。

あわてて実家に駆けつけたAさんは父親が認知症らしいことに気が付きました。

Aさんは両親が年を取ってから生まれたひとり息子で、昨年母親が亡くなった際にはそのような兆候は全く見られなかったため、本当に驚いてしまいました。

家の中は散らかっており、その中に複数枚の借金をうかがわせる書類を見つけました。

よくよく調べてみると全部で600万円ほどあります。

うち150万円は借用書から親戚からであることがわかったので、そちらは急いで返済しました。

残りは認知症になったと思われる頃にカードで借り入れたものでした。

カード
Aさんは県外で小さな飲食店を営んでいます。

しかし、繁盛しているとは言えず、自身の生活もそれほど裕福ではありません。

150万を返済するのが精いっぱいで、残りの借金などを支払う余裕はありません。

父親に聞いてもお金を借りたことすらよく覚えていない様子。

こうした場合、この借金の支払い義務はAさんにあるのでしょうか?

寝耳に水とはこの事でしょう。

世の中には相手が認知症とわかっているのに貸付を行う悪徳業者もいるようです。

「貸付詐欺」と言って相手がよく理解できないことをいいことにお金を貸し付けるといったことが横行していますので注意が必要です。

重要

Aさんが父親の保証人にでもなっていなければ、親の借金と言えども返済する義務はありません。

Aさんは父親が借金をしていることを知りませんでした。

そのことからAさんが父親の保証人だったはずはなく、Aさんには返済義務はないでしょう。

しかし、貸した方もある意味お金のプロですから、簡単に引き下がらないでしょう。

父親に借金の返済能力がない場合であっても、父親には借金の返済義務があります。

親が認知症になり判断能力がないまたは不足していると考えられ、自分での解決はできないと判断した場合は、まずは過払い金があるかも知れませんので弁護士に相談してみましょう。

過払い金などがあればここの段階で解決できるかもしれません。

解決方法とは

返済の方法としては「自己破産」の申請を行うか「成年後見制度」を利用するということが考えられます。

「自己破産」を選択すると、生活のための必要最低限のもの以外はすべて差し押さえられて換価されることになります。

「成年後見制度」とは認知症や高齢なため、判断能力が低下したときに、保護者のような人を立てて、その判断を代わりに行う制度です。

判断ができないために財産や資産の管理が正常にできず、詐欺に巻き込まれ財産を失ってしまう危険性があります。

正しい判断ができなくなった人に代わって財産を管理することは、財産を守るためとても重要なことです。

手続きについては

  1. 後見申し立てを行います。
  2. 親族の中から後見人を選びます。適当な人がいない場合は司法書士や弁護士などが候補者になることもあります。
  3. 後見人が選任。

選任された後見人から借金などの問題にくわしい司法書士や弁護士など専門家に債務整理をお願いするということになります。

成年後見制度は手続きが少し大変になりますし、時間もかかります。

病院から診断書を取ったり、その他の必要書類の準備をして申し立てを行うのですが、家庭裁判所に申し立てを行って、後見人が選任されるまで数ヶ月かかります。

その間も借金の取り立ては続くでしょう。

しかし、だからといって親族が肩代わりして返済することはありません。

貸金業者には債務整理をするということを伝えておきましょう。

後見人の選任後、専門家に依頼して債務整理が始まります。

司法書士などが貸金業者等に通知して、自己破産などの手続きを行っていきます。

借金の整理はとても難しく、素人にはなかなか難しいのですが、専門家の力を借りるなどして解決を急ぎたいものです。

借金の額が大きい、借金の状況が把握しきれない多重債務などの場合は

自己破産

任意整理

個人再生

などの債務整理を行う場合が多いようです。

どの手続をとるべきかは、メリット・デメリットなど専門家に説明を受けて考え、一番良い方法を判断できるよう助言してもらいましょう。

今回のケースは父親が健在の場合

もし父親が死亡していてAさんが父親から相続を受けていたとしたら・・・。

Aさんはその時から父親の財産に関するすべての権利や義務を承継するということが民法で定められています。

もし、Aさんが父親から相続を受けていたとしたら、父親が作った借金をAさんが背負うことになります。

重要

ここでAさんが相続を放棄すれば、借金返済義務を受け継ぎませんので、借金を背負わなくてもよくなります。

ただし、「相続の放棄」は父親が健在である間はできません。

父親が亡くなった場合、Aさんは3か月以内に相続の方法を選択しなければなりません。

相続の方法として「単純承認」「限定承認」「相続の放棄」の3つがあげられます。

単純承認とは

「プラスの財産、借金などのマイナスの財産もすべて引き継ぎますよ。」という相続です。

限定承認とは

「相続で受け継いだ預金などのプラスの財産額を限度に、借金などの負債も受け継ぎます。」という相続です。

これはどういうことかというと、相続したプラスの財産が200万円、マイナスの財産が600万円あったとします。

そういった場合にプラスの財産200万円とプラスの財産の金額を上限としてマイナスの財産を200万円のみ相続しますよということなのです。

相続の放棄とは

「相続はすべてを受け継ぎません。」ですよね。

借金がたくさんある場合は相続をすると借金ももれなく付いてくるわけで、こうするより仕方ありません。

もし、Aさんが意思表示をしなかった場合は自動的に「単純承認」をしたとみなされます。

いろいろな方法で親の借金を整理することができます。

ただ、「借金を踏み倒すようで申し訳ない。何とか返済していきたい。」と考える人もいるかもしれません。

平気で借金を踏み倒す人も多い中、そういった考えを持つ方は本当に立派だと思います。

しかし、少額な借金であれば代わりに返済できるかもしれませんが、自分や自分の家族の生活を脅かすような借金は専門家に相談し、早目に解決することが望ましいと考えます。

自分に親の借金を返済していく力があるのかを見極め、自分や家族の人生の重荷にならないよう、しっかり考えていただきたいと思います。